このキャンプはどんなものか

ライオンズの国際交流プログラム YCE は、LCI が世界各地で展開する平和プログラムです。言語学校でも旅行会社でもありません。参加には多くの場合、地元ライオンズクラブによる推薦(スポンサークラブ)が前提になります。

イタリアのYCEには、各地区が夏に開くキャンプとは別に、108複合地区(イタリア全国)として運営する「Campo Italia(カンポ・イタリア)」があります。複合地区の規程には、夏の Campo Italia、障がいのある若者のための Campo Italia Disabili と並んで、冬の Campo Italia Invernale(イタリア冬季キャンプ)が独立した項目として置かれています。複合地区の名簿では、冬季キャンプの監督(Direttore)を108AB地区(プーリア州)のクラブ会員が務めています。2017-18年のシーズンには、すでに「第3回」の冬季キャンプとしてプーリア州のアルタムーラとグラヴィーナ・イン・プーリアで受け入れた様子が地元紙で報じられています。

イメージをひとつだけ借りるなら、クリスマスの1週間は親戚の家に泊まる年末の帰省、年明けの2週間はテーマを決めた修学旅行に近い構成です。前半は家庭ごとに中身が違い、後半は全員が同じバスで同じ道をたどります。

日程と規模の骨格は次のとおりです(108複合地区の規程、名簿、108AB地区の報告、オーストリアのライオンズYCEサイトの一覧、本稿調査日2026-10-06時点)。

誰が集まるか(応募先を探すときの目安)

プログラムの大きな流れ

ここでは、行程が最も詳しく公開されている2024-25年「La Magna Grecia」を軸に、他のシーズンの報告で補いながら、ひとつの冬の流れを並べます。

  1. 1秋〜出発前 — 各国の窓口に書類を出します。ドイツの例では、保険の証明とホスト家庭あての英文の手紙も提出書類に入っています
  2. 212月下旬 到着〜家庭滞在(約1週間) — 到着地はホスト家庭によって変わります。2024-25年の長野の派遣生は、ウンブリア州ペルージャの家庭で、祖父母の家を訪ね、家族の友人を招いたクリスマスパーティに加わり、写真を入れた写真立てを贈り合い、街で一番大きなクリスマスマーケットや教会、地元のバレーボールの試合にも出かけています
  3. 312月28日前後 キャンプ開始 — 全員が合流し、宿を移しながら旅をします。2024-25年の行程はタラント、パエストゥム、メタポント、シバリ、タオルミーナ、シラクーサ、ピアッツァ・アルメリーナ、アグリジェント
  4. 4年明け 旅先の町で地元クラブが迎える — 2025年1月7日付の地元紙によると、アグリジェントではレオクラブと2つのライオンズクラブが一行を迎え、専門ガイドの案内で神殿の谷を見学し、白い断崖スカラ・デイ・トゥルキでは地元の町長があいさつしました
  5. 51月上旬 閉会式、解散 — 2023-24年はブリンディジの歴史的建物グラナフェイ=ネルヴェーニャ宮殿で閉会式を開き、参加者が自国の国歌に合わせて国旗を持って行進しました。2024-25年の解散地はバーリで、長野の派遣生の帰国は1月10日でした

このプログラムの魅力

クリスマスは家庭で、年明けは旅の途中で

日程の前半に家庭滞在を置くことで、参加者は家族で過ごす行事が続く時期を、イタリアの家の中で迎えます。2026-27年の案内も、家庭での時間について、自国の紹介を話題にくつろぎ、家族そろってイタリアの料理を味わい、明かりで飾られた街を訪ねる時期だと書いています。キャンプはそのあと年をまたいで続き、1月6日の公現祭(※)のころまで旅が続きます。観光の季節ではなく、暮らしの季節に合わせた組み立てです。クリスマスを家庭で過ごしてから旅に出る順番なので、家族の一員として迎えられた安心感を持ったまま仲間と出会えるのだと考えられます。

毎年、テーマとルートを変える

2022-23年はピサ・フィレンツェ・シエナ、2023-24年はローマからブリンディジまでの「アッピア街道(Via Appia Regina Viarum=街道の女王)」、2024-25年は南イタリアからシチリアにかけての「マグナ・グラエキア」、2025-26年は「中世の村々」、2026-27年はフィレンツェ。テーマが変わるたびに、ルートそのものが教材になります。2023-24年は、兵士や商人、巡礼者が何世紀も行き来した道を、ローマから港町ブリンディジまで2週間かけてたどりました。

遺跡は、専門家とその土地の人が案内する

2023-24年は主要な考古学機関と協力し、プロの考古学者が参加者に付き添って案内したと108AB地区が報告しています。2017-18年には、アルタ・ムルジャ国立公園がシャトルバス2台を用意し、文化財当局が博物館やボトロマーニョの発掘現場の見学を受け入れました。アルタムーラではパン屋に立ち寄り、名物のパンやフォカッチャを味わっています。旅先の公的機関がそれぞれの持ち場で一日を引き受けています。

レオの若いリーダーが付き添う

2023-24年は、108AB、108Tb、108Yaの3つのレオ地区から4人がキャンプリーダーを務めました。キャンプ監督は閉会式で、まずこの4人の働きに感謝を述べ、「この数日間は大変だったが、とても引き込まれ、心が躍る経験だった」「世界のさまざまな地域から来た若者たちが、友情と寛容の絆で結ばれた」と振り返っています。参加者と年の近い世代が毎日そばにいることで、旅の運営と交流が同時に進みます。

立ち寄る町ごとに、地元のクラブが迎える

全国キャンプでも、迎えるのはその土地のクラブです。2025年1月のアグリジェントでは、地元のレオクラブの役員と2つのライオンズクラブの会員が一行を迎え、シチリアのレオ地区の会長も同席しました。移動型のキャンプでも、行く先々で「ここの人たちに会った」という記憶が積み重なる仕組みになっています。

参加者に費用を求めないことを、規程に書いている

108複合地区の規程は、冬季キャンプについて「キャンプ費やその他の金銭的な負担を、参加者やそのスポンサーであるライオンズ(クラブ、地区、複合地区)に求めることはできない」と定めています。2025年4月の改正案では、必要な場合に上限300ユーロの「参加、確認料」を認める代わりに、収支計画を添えてガバナー協議会に説明することを条件にしています。費用を変える場合も、上限と手続きを先に決めておく書き方です。

留学ではなくYCEを選ぶ理由

留学とYCEのどちらにするか迷っている高校生、大学生のあなたに向けて、「Campo Italia Invernale」ならではの点を整理します。

日本の学生にとって、このキャンプのいちばんの特徴は冬休みに行けることです。冬の行き先は夏より限られますが、335複合地区は2023-24年の冬にイタリア、マレーシア、ニュージーランド、ドイツへ計9人を送り、334-E地区も2年続けて冬のイタリアへ学生を送り出しています。そして中身は、語学学校の授業でも観光ツアーでもありません。前半はイタリアの家庭のクリスマスに入り、後半は十か国以上の同世代と同じバスで旅をします。

短期留学や旅行とは、過ごす場所も、そこで出会う相手も違います。日本の派遣生の報告から、次の三点が見えてきます。

  1. 家庭のクリスマスは、旅行では入れない場所 — 祖父母の家への訪問、家族の友人とのパーティ、贈り物の交換。2024-25年の長野の派遣生は「日本ではあまり体験できないクリスマスの楽しみ方を知れた」と書いています
  2. 違いに「慣れる」経験ができる — 2025-26年の派遣生は、集合時間に15分以上遅れてくる参加者が多いことに最初は驚き、やがて慣れたと振り返り、「慣れることの大切さを知れた」と書いています
  3. 自分の将来像がくっきりする — 同じ派遣生は、英語の大切さと、日本の外で暮らす人たちと交流する楽しさに気づき、「将来の夢の理想像の解像度が非常に上がった」と結んでいます

冬期派遣の枠や行き先は地区ごとに違います。関心がある人は、地元のクラブか地区のYCE委員会に「冬期のイタリア派遣があるか」を聞いてみるのが早道です。

派遣、地域キャンプを厚くするヒント

ライオンズクラブのメンバーにとって、「Campo Italia Invernale」から学べることは景色や行程そのものより、伝え方と仕組みにあります。

このキャンプから学べるのは、イタリアの名所の選び方ではなく、季節の行事を軸にした日程、テーマを一本通したルート、受け入れ地区を数年固定する体制、受け入れと派遣枠を結びつける規程です。公開資料から具体的に抜き出すと、次のとおりです。

  1. 1年末年始の行事を、家庭とキャンプのどちらに置くか先に決める — イタリアはクリスマスを家庭(12月21日〜28日など)、公現祭の1月6日前後をキャンプの中に置いています。日本で冬の受け入れをするなら、大みそかと正月を家庭で過ごすか全員で過ごすかを先に決めると、家庭とクラブの役割分担がはっきりします
  2. 2ひとつの地区が数年続けて引き受ける — 2023-24年の閉会式で108AB地区のガバナーは、この冬季キャンプが「今後2年もプーリアで開かれる」と述べ、2024-25年の行程もプーリアから出発しています。現在の複合地区の名簿でも、冬季キャンプの監督は108AB地区の会員です。開催地と運営チームを数年同じ地区に置くことで、準備の経験が翌年に引き継がれます
  3. 3ルートに一本のテーマを通し、専門家に案内を頼む — アッピア街道をローマからブリンディジまで、マグナ・グラエキアをタラントからアグリジェントまで。2023-24年は考古学機関と組み、プロの考古学者が付き添いました。地域キャンプでも、街道や川、城下町など一本の筋で行程を組むと、見学先が「点」ではなく「線」になります
  4. 4付き添いのリーダーを、複数地区のレオから集める — 2023-24年は3つのレオ地区から4人。一つの地区のレオだけに頼らず、近隣地区と組むことで、2週間の移動型キャンプでも付き添いの人数を確保しています
  5. 5立ち寄り先では、地元クラブと自治体に「その日」を任せる — アグリジェントではレオクラブと2つのライオンズクラブが迎え、町長があいさつしました。2017-18年には、当時の複合地区コーディネーターの働きかけで国立公園がシャトルバス2台を出し、文化財当局が発掘現場の見学を受け入れています。国立公園や博物館のような公的機関に早めに協力を頼むと、見学先の幅が広がります
  6. 6閉会式は、地域の歴史的な建物で国旗と国歌とともに — 2023-24年はブリンディジのグラナフェイ=ネルヴェーニャ宮殿で、参加者が自国の国歌に合わせて国旗を持って行進しました。ガバナーや地区役員、レオ地区の会長も同席し、受け入れの成果を地域に見せる場になっています
  7. 7受け入れと派遣枠を、規程で結びつける — 108複合地区の規程は、全国キャンプ(夏、冬)の受け入れに対応して各地区に4つずつ派遣枠を割り当て、地区キャンプは受け入れた人数と同じ数だけ派遣枠を得る「相互主義」で配分すると定めています。迎える努力が、そのまま地元の若者を送り出す機会につながる設計です
  8. 8費用の原則は「取らない」、例外は上限と計画書つきで — 冬季キャンプは参加者、スポンサーに費用を求めないのが原則で、改正案でも上限300ユーロ、収支計画の提出が条件です。キャンプ費を見直すときは、金額と一緒に「誰に、何の手続きで説明するか」を決めておくと、送り出す側も判断しやすくなります

学生の不安とクラブの期待——ギャップへの気づき

支える立場の方にとって大切なのは、学生が思い描く姿と公表されている条件の差を、出発前に一緒に埋めておくことです。

学生側に起きやすい期待/不安公開情報から見える制約、実態
「クリスマスにイタリアを観光できる」前半の約1週間は家庭で過ごす時間。名所めぐりは後半のキャンプが中心
「ホスト家庭は最後まで同じ」2025-26年の派遣生は、トラブルがあって2つの家庭で過ごしたと報告
「みんな時間どおりに動く」同じ報告では、15分以上の遅刻が多く、最初は驚いたが慣れたと記載
「冬休みの間に帰ってこられる」2024-25年はキャンプ終了が1月9日、長野の派遣生の帰国は1月10日。始業日との調整が必要になることも
「キャンプ費がない=全部無料」規程はキャンプ費を求めない内容。航空券や保険は別で、ドイツの応募書類には保険の証明が含まれる
「日本人が多いから安心」2017-18年は22名中13名が日本だったが、2023-24年は7か国、2024-25年は十か国以上。年によって構成が違う
「年齢の条件は毎年同じ」2024-25年は18〜21歳、2026-27年の案内は16〜21歳
(クラブ側)「全国キャンプは地元に関係がない」行く先々で地元のレオ・ライオンズクラブや自治体が一日を引き受けている

ずれが生まれやすいのは、「年末年始のイタリア」という響きだけが先に伝わったときです。学生は観光とイルミネーションを、家族は冬休みの中に収まる日程を思い浮かべがちですが、公開されている報告が描いているのは、家庭の中で過ごすクリスマスと、時間の感覚も言葉も違う十か国以上の仲間との2週間の旅です。出発前に、家庭滞在とキャンプの配分、帰国日、ホスト家庭が変わる可能性を同じ紙に並べて話しておくと、学生とクラブの思い描くものがそろいやすくなります。

よくある質問

Q. 日本から参加できる?

公開資料では、335複合地区(近畿)や334-E地区(長野県)が冬期にイタリアへ学生を派遣しています。派遣枠や行き先は地区ごとに決まるため、所属する地区のYCE委員会への確認が必要です。

Q. キャンプ費はいくら?

108複合地区の規程は、冬季キャンプで参加者やスポンサーに費用を求めないと定めています。航空券や保険などの費用は別です。

Q. 夏の Campo Italia とはどう違う?

規程上、夏の Campo Italia は7月第1週から8月第1週の間に16〜18日、外国人参加者38〜45名で開くと定められています(改正案では15日以上+家庭滞在10日、30名以上)。冬季キャンプは年末年始の開催で、2017-18年の参加者は22名でした。

Q. 2025-26年はどこを巡った?

イタリアのライオンズ青少年交換サイトの一覧に「I Borghi Medievali(中世の村々)」の名前で掲載されています。334-E地区の派遣生の報告では、家庭滞在とキャンプの両方に参加しています。

Q. 2026-27年の予定は?

オーストリアのライオンズYCEサイトの一覧では、フィレンツェで家庭滞在12月19日〜27日、キャンプ12月27日〜2027年1月6日、16〜21歳です。ドイツのライオンズ財団も2026-27年のイタリア冬季キャンプのページを設けています。

Q. 応募の締切は?

日本の冬期派遣は地区ごとに募集の時期が決まっています。

補足、用語注釈

  1. 略語 — YCE(Youth Camps and Exchange/ユースキャンプ及び交換)。LCI(Lions Clubs International/ライオンズクラブ国際協会)。MD(Multiple District/複合地区)。YCEC(Youth Camps and Exchange Chairperson/地区のYCE委員長)。CdG(Consiglio dei Governatori/ガバナー協議会)。
  2. 名称の表記ゆれ — イタリア語の正式名は Campo Italia Invernale。地区の報告では「MD 108 Italy Lions Winter Youth Camp」、地元紙では「Lions Winter Camp Italia」、オーストリアの一覧では「Lions campo Italia Winter」と書かれています。
  3. 公現祭(Epifania) — 1月6日のキリスト教の祝日で、イタリアでは年末年始の休みの区切りとされる日です。
  4. マグナ・グラエキア — 古代ギリシャ人が南イタリアとシチリアに築いた植民都市群の総称。2024-25年の行程名「La Magna Grecia」はこれに由来します。
  5. 108複合地区の地区名 — 108ABはプーリア州、108Tbはエミリア地方、108Yaはカンパニア州など、108Ybはシチリア州を担当する地区です。
  6. 回数 — 2017-18年の地元紙は「第3回」の冬季キャンプと書いています。
  7. 規程の改正案 — 費用と参加人数の改正案は、2025年4月に108複合地区のサイトに掲載された資料(ALLEGATO D)によります。
  8. 個人情報 — 地区や地元紙の記事、日本の帰国報告には個人名が載っていますが、本文では扱っていません。未成年を含む参加者の写真も掲載していません。
  9. 出典の方針 — 非公式に転記されたYCEディレクトリは、本文の数字や日程の根拠に使っていません。複合地区、地区、クラブの公式サイト、公開PDF、報道、LCIのページのみを出典にしています。

※数値、日程、募集の可否は主催者の最新情報を必ず確認してください。

ほかの事例

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