このキャンプはどんなものか

ライオンズの国際交流プログラム YCE は、LCI が世界各地で展開する平和プログラムです。言語学校でも旅行会社でもありません。参加には多くの場合、地元ライオンズクラブによる推薦(スポンサークラブ)が前提になります。

このキャンプは1981年、アリゾナ州の当時の21-B地区で「C. Kirby Smithe Lions International Youth Camp」として始まりました。現在は非営利団体(※501(c)(3))として運営され、Arizona Lions Youth Exchange(アリゾナ・ライオンズ青少年交換)の名前で活動しています。公式サイトによると、これまでにヨーロッパ、アジア、アフリカ、南米から370人を超える若者を受け入れ、1981年から1996年の間には、送別の夕食会にライオンズクラブ国際協会の国際会長を迎えたことも記されています。同じ団体が、アリゾナの若者を海外や他州のキャンプへ送り出す窓口も兼ねています。

イメージをひとつだけ借りるなら、10人ほどの仲間と乗るバンが、州内のライオンズクラブを順番に訪ねて回る「巡回訪問」に近い形です。観光地を巡るだけでなく、立ち寄る町ごとに、その町のクラブの会員と同じテーブルで食事をします。

日程と規模の骨格は次のとおりです(運営団体の公式サイト、2024年の募集要項(イタリアのライオンズ青少年交換サイト掲載のPDF)・本稿調査日2026-10-07時点)。

誰が集まるか(応募先を探すときの目安)

プログラムの大きな流れ

日程の確定表は年ごとに変わります。ここでは、公式サイトが「2週間のキャンプのバン旅行の例」として載せている行程と、2024年の募集要項の日付を並べて、ひと夏の流れを組み立てます。

  1. 1出発前 — ホスト家庭と参加者は、来る前にメールやFacebookで紹介され、やりとりを始めます
  2. 27月上旬 ツーソンに到着 — 2024年の募集要項では期間の始まりは7月4日。拠点はツーソン中心部のホテルです
  3. 3南の旅(行程例では7月8日〜14日) — マンモスでサンペドロのライオンズと昼食、グローブのクラブが用意した宿に泊まり、翌日はメルビン・ジョーンズ記念施設と博物館へ。モレンシーのレオと昼食をとって鉱山を見学し、夜はサフォードのライオンズとレオと夕食。コチース・ストロングホールドの牧場、ビズビー、トゥームストーン、シエラビスタ、国境の町ノガレスを回り、サン・ザビエル伝道所を経てツーソンに戻ります。ツーソン市警の科学捜査ラボや空軍州兵の基地も見学先に入っています
  4. 4家庭滞在(2024年は7月13日〜26日) — アリゾナの家庭で約2週間、その家の暮らしに加わります
  5. 5北の旅(行程例では7月29日〜8月5日) — ウィッケンバーグのクラブとジープツアー、プレスコットでは1日をクラブが受け持ち、ワトソン湖でカヤック。セドナで聖十字架礼拝堂やスライドロックへ行き、フラッグスタッフでは大学の寮に泊まります。グランドキャニオンではその町のクラブと夕食をとり、フェニックスのクラブとの夕食を経てツーソンへ戻ります
  6. 68月上旬 解散 — 2024年の募集要項では期間の終わりは8月5日です

このプログラムの魅力

立ち寄る町ごとに、その町のクラブが一食を受け持つ

行程例を見ると、ほぼ毎日の昼食や夕食に、その土地のクラブの名前が入っています。マンモスのサンペドロ・ライオンズ、モレンシーのレオ、サフォードのライオンズとレオ、トゥームストーン、シエラビスタ、ウィッケンバーグ、フラッグスタッフ、グランドキャニオン、フェニックスのクラブ。公式サイトの協賛ページには、受け入れや食事、催しを担ったクラブとして20を超える名前が並んでいます。一つのクラブがすべてを抱えるのではなく、州内のクラブが旅の一コマずつを引き受ける形です。

創設者の生まれた土地を、旅の途中で訪ねる

南の旅の2日目に訪ねるのは、ライオンズクラブ国際協会の創設者メルビン・ジョーンズの生家に建つ記念施設です。記念施設の公式サイトによると、ジョーンズは1879年に当時のアリゾナ準州フォートトーマスの近くで生まれ、1917年の協会発足から1961年に亡くなるまで事務総長を務めました。記念施設はアリゾナのライオンズが1965年に建て、1999年にライオンズの「聖地(Shrine)」に指定されています。高さ50フィート(約15メートル)の尖塔と博物館があり、ジョーンズの「人のために何かをし始めなければ、遠くへは行けない」という言葉を伝えています。世界中から来る若者に、ライオンズの始まりの場所を自分の目で見てもらえるのは、アリゾナならではです。

砂漠、鉱山、国境の町まで、州の幅をまるごと見せる

南の旅には、銅の鉱山の町モレンシーでの鉱山見学、西部開拓時代の町トゥームストーン、アメリカとメキシコの両側にまたがる国境の町ノガレスが入っています。北の旅には、赤い岩山のセドナ、グランドキャニオン、モニュメントバレー、モゴヨン・リム(※)が並びます。体験者の一人は「バンの旅で州全体を見られて、いくつもの家庭での滞在で文化を知ることができる」と書いています。

地域の企業や公的機関が、見学先と食卓を開く

協賛ページには、クラブのほかに、ツーソンのホテル、アリゾナ空軍州兵第162航空団、ツーソン市警の科学捜査ラボ、モレンシーの鉱山を運営する会社、トゥームストーンの宿、害虫駆除会社などが並びます。行程例でも、空軍州兵の基地見学や、害虫駆除会社が提供する公園でのバーベキューが組み込まれています。地元の仕事の現場を見ることが、そのまま旅の中身になっています。

ライオンズの州の事業にも立ち寄る

沿革のページは、北の旅の行き先に「キャンプ・タティイー」を挙げています。キャンプの公式サイトによると、ここは1958年に始まったライオンズのキャンプで、障がいのある子どもと大人を対象に、夏の1週間ずつのセッションを8回、費用をとらずに開いています。観光地だけでなく、受け入れ側のライオンズが長く続けてきた奉仕の現場も、旅の行き先になっています。

受け入れと送り出しを、同じ団体が担っている

公式サイトの応募ページは、アリゾナの16〜22歳を海外や他州のキャンプへ送り出す手順を載せています。費用の目安は海外のキャンプで約2,000ドル、米国内で約1,000ドル。クラブ、複数クラブの共同、家族、団体の基金を組み合わせて出すとしています。経済的に余裕のない家庭の若者には全額を支援する枠もあり、その最初の一人は2025年の夏にエストニアのキャンプへ行きました。迎える活動と送り出す活動が、同じ窓口でつながっています。

留学ではなくYCEを選ぶ理由

留学とYCEのどちらにするか迷っている高校生・大学生のあなたに向けて、このキャンプならではの点を整理します。

このキャンプでいちばん大きいのは、アリゾナの家庭で約2週間暮らすことと、州内のライオンズを訪ねて回る2回の旅が、ひと夏の中でつながっていることです。ツアーなら観光地を回れますが、行く先々でその町の人と食卓を囲み、ライオンズの創設者が生まれた場所に立つ旅は、YCEでなければ組めません。語学留学のように教室で過ごす時間もありません。

公式サイトに載っている体験者の声からは、次の三点が見えてきます。

  1. 家族の一員として迎えられる — 「ホスト家庭は本当の家族のようだった」「孫娘のように迎えてくれて、何時間も話した」という声が並んでいます
  2. 旅の途中で、知らないことに自分で向き合う — ある参加者は、このキャンプが「空港のような、初めて直面することに対処する力」を育ててくれたと書いています
  3. 同じバンの10人が、小さな家族になる — 「同じ年ごろの仲間と2週間旅をすると、小さな家族ができたようになる」という声があります。人数が少ない分、一人ひとりとの距離が近くなります

アメリカのキャンプは州ごとに中身が大きく違います。関心がある人は、地元のクラブか地区のYCE委員会に、アリゾナを含むアメリカのキャンプの受け入れ枠があるか聞いてみるのが早道です。

派遣・地域キャンプを厚くするヒント

クラブの青少年担当としてこのキャンプを見ると、日本でも取り入れやすい点が見えてきます。

このキャンプから学べるのは、アリゾナの名所の選び方ではなく、旅の一コマずつを州内のクラブに割り振る組み方、地元の企業や公的機関を見学先に招く方法、自分たちの奉仕事業や歴史を行程に入れる発想、迎える活動と送り出す活動を一つの窓口で回す体制です。公開資料から具体的に抜き出すと、次のとおりです。

  1. 1旅の行程を「クラブごとの一食」で組む — 行程例では、7月8日から14日までの7日間だけで、サンペドロ、グローブ、モレンシーのレオ、サフォード、トゥームストーン、シエラビスタの各クラブが昼食・夕食・宿を受け持っています。地域キャンプで移動日をつくるなら、通過する町のクラブに「この日の昼食だけ」と頼むと、一つのクラブに負担が集まらず、参加者はクラブごとの顔を知ることができます
  2. 2協力してくれたクラブと企業の名前を、公式サイトに残す — 協賛ページには20を超えるクラブと、ホテル、空軍州兵、市警の科学捜査ラボ、鉱山会社などの名前が並び、「漏れていたらメールで知らせてほしい」と添えています。毎年の協力先を一覧にして公開しておくと、翌年の依頼もしやすくなります
  3. 3地元の仕事の現場を見学先にする — 鉱山、空軍州兵の基地、市警の科学捜査ラボ。観光施設ではない場所が行程に入っているのは、協賛先がそのまま見学を受け入れているからです。クラブ会員の勤め先や地元の工場、消防や警察に見学を頼むと、その地域らしい一日になります
  4. 4自分たちの地域のライオンズの歴史と継続事業を行程に入れる — アリゾナは創設者の生家(1965年に建てた記念施設)と、1958年からのキャンプ・タティイーを旅の行き先にしています。日本のクラブでも、地区が長く続けてきた奉仕の現場や、クラブの記念事業の場所を見学先に入れると、参加者にとって「ライオンズのキャンプに来た」意味がはっきりします
  5. 5受け入れ人数を10人に絞り、応募の多さも先に伝える — 1台のバンで回れる人数に合わせて枠を最大10人とし、毎年50件を超える応募があることと、12月より前の応募を勧めることを公式サイトに書いています。枠を小さく保つと、行く先々のクラブも食事や宿を用意しやすくなります
  6. 6ホスト家庭はライオンズ会員に限らない — 公式サイトは、ホスト家庭がライオンズ会員でなくてもよいと明記し、受け入れ前にメールやFacebookで参加者と顔合わせをしてもらう流れを紹介しています。会員以外の家庭にも声をかけると、2週間の家庭滞在を引き受ける家庭の幅が広がります
  7. 7送り出す側の費用の目安と、資金の組み合わせを公開する — 海外のキャンプは約2,000ドル、米国内は約1,000ドルという目安を示し、クラブ単独、複数クラブの共同、家族、団体の基金の組み合わせで出せるとしています。経済的に余裕のない若者向けの全額支援枠もあります。派遣の費用を誰がどう分担できるかを先に示すと、クラブも家庭も判断しやすくなります
  8. 8体験者に、次の参加者へ向けた声と映像を残してもらう — 公式サイトには、2018年と2019年の参加者の声や、元参加者が撮影・編集した動画、音楽を担当した元参加者の名前が載っています。応募を考える人にとって、主催者の説明よりも伝わりやすい資料になっています

学生の不安とクラブの期待——ギャップへの気づき

受け入れる側や支える立場にとっての示唆は、参加者が思い描くことと公開情報のあいだに、ずれが起きやすい点です。

学生側に起きやすい期待/不安公開情報から見える制約・実態
「アメリカの夏キャンプ=都会の観光」行き先は砂漠の町、鉱山、先住民の保留地、国境の町が中心。移動はほとんどがバン
「ずっと同じホテルに泊まる」拠点はツーソンのホテルだが、旅の途中はクラブが用意する宿、大学の寮、グランドキャニオンのロッジなどを移る
「暑さはなんとかなる」体験者自身が「本当の砂漠の暮らし、そして暑さ」を挙げ、サングラスと歩きやすい靴を勧めている
「移動中は休める」体験者の助言は「バンの旅には枕を持っていくこと。でないと眠れない」
「メキシコにも寄れるから気軽」行程にはメキシコ側のノガレス(ソノラ州)も含まれる。国境を越える日の書類の扱いは主催に確認が必要
「応募すれば受け入れてもらえる」枠は毎年最大10人で、応募は50件を超えると公式サイトに記載。12月より前の応募が勧められている
「毎年同じ日程で開かれる」本稿で確認できた最新の受け入れ要項は2024年版。2026年以降は各国の窓口で確認が必要
(クラブ側)「受け入れは一つのクラブの仕事」行程例では、州内の10を超えるクラブとレオ、地元企業が一食ずつ、一か所ずつを分担している

ずれが生まれやすいのは、「グランドキャニオンに行けるアメリカのキャンプ」という一言だけが先に伝わったときです。学生は名所めぐりを、家族は涼しいホテル暮らしを思い浮かべがちですが、公開されている行程が描いているのは、真夏の砂漠をバンで移動し、毎日違う町のクラブの人たちと食卓を囲む旅です。出発前に、行程例の1日分を一緒に読み、暑さ、長い移動、日ごとに変わる宿と食事の相手を確かめておくと、学生とクラブの思い描くものがそろいやすくなります。

よくある質問

Q. 日本から参加できる?

公式サイトによると、これまでの参加者はヨーロッパ、アジア、アフリカ、南米から来ています。応募は各国のYCE窓口を通じて届く仕組みなので、所属する地区のYCE委員会に確認するのが近道です。

Q. キャンプ費はいくら?

2024年の募集要項では450 USDです。航空券や保険などは別にかかります。

Q. 何歳から参加できる?

2024年の募集要項と公式サイトの沿革では16〜20歳です。

Q. ホスト家庭は何軒?

沿革のページは「アリゾナの家庭での2週間」と書いています。体験者の声には「いくつもの家庭での滞在」という表現もあり、家庭の数は年や参加者によって違う可能性があります。

Q. メルビン・ジョーンズ記念施設とは?

ライオンズクラブ国際協会の創設者メルビン・ジョーンズの生家があったフォートトーマス近くに、アリゾナのライオンズが1965年に建てた記念施設です。尖塔、博物館、記念の壁があり、毎年1月13日の誕生日に近い週末に記念の催しが開かれます。キャンプでは南の旅の行程に組み込まれています。

Q. 2026年以降も開かれる?

公式サイトの2026年版の応募ページは、アリゾナの若者を送り出すためのものです。受け入れの要項は、地区の窓口で確かめてください。

補足・用語注釈

  1. 略語 — YCE(Youth Camps and Exchange/ユースキャンプ及び交換)。LCI(Lions Clubs International/ライオンズクラブ国際協会)。MD(Multiple District/複合地区)。アリゾナ州は21複合地区で、現在は21-N地区と21-S地区に分かれています。YEC(Youth Exchange Chairperson/青少年交換委員長)。
  2. 501(c)(3) — アメリカの税法上の区分で、寄付を受けられる非営利の公益団体を指します。寄付の小切手の宛名は「C. Kirby Smithe International Youth Exchange」です。
  3. 名称の表記ゆれ — 正式名は C. Kirby Smithe Lions International Youth Camp。現在の活動名は Arizona Lions Youth Exchange。オーストリアのライオンズYCEサイトの一覧では「Arizona Youth Camp」と書かれています。
  4. モゴヨン・リム(Mogollon Rim) — アリゾナ州中部から東部にかけて長く延びる断崖で、北の高原と南の低地の境目にあたります。
  5. 行程例の年 — 「2週間のキャンプのバン旅行の例」は、年を限らない例として載っています。北の旅は8月1日の次が8月4日の記述です。
  6. 家庭滞在の位置 — 2024年の募集要項の家庭滞在(7月13日〜26日)と行程例の日付から、南と北の旅の間に家庭滞在をはさむ形と読んでいます。年によって入れ替わる可能性があります。
  7. 数字の時点 — 「370人を超える受け入れ」「2021年に40年目」は公式サイトの沿革の記載どおりです。
  8. 個人情報 — 公式サイトには体験者や担当者の個人名が載っていますが、本文では扱っていません。未成年を含む参加者の写真も掲載していません。
  9. 出典の方針 — 非公式に転記されたYCEディレクトリは、本文の数字や日程の根拠に使っていません。運営団体と関連団体の公式サイト、公開PDF、LCIのページのみを出典にしています。

※数値・日程・募集の可否は主催者の最新情報を必ず確認してください。

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