アドリア海の半島で続くキャンプ
YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先の家庭やキャンプで過ごします。クロアチアのライオンズのサイトは、この交流を「観光でも、留学でも、仕事でもなく、ほかの国の文化を学ぶための特別な機会」と説明しています。

キャンプが開かれるイストラ半島は、アドリア海でいちばん大きな半島です。2025年のキャンプのちらしは、古代ローマの人々がこの土地を「魔法の土地」と呼んだことや、中世の町並みと手つかずの自然が残っていることを紹介しています。そのちらしでキャンプは「第24回」とされていて、クロアチアのライオンズが長く国際キャンプを続けてきたことが分かります。ポレチが会場になったのは、2025年の地元ニュースによるとその年で7回目でした。
2026年のキャンプは、ポレチのライオンズクラブが中心になって運営しました。宿は、町の北にあるリゾート地ランテルナ地区の宿泊施設です。キャンプの責任者は、ポレチのクラブの会員ボリス・ユーゴヴァツさん。若者のそばにつく世話役の4人は、クロアチア各地のライオンズクラブやレオクラブ(ライオンズの若い世代のクラブ)の若い会員です。
まず1週間、クロアチアの家庭で
2026年の交流は、7月15日に始まりました。クロアチアのライオンズのニュースによると、若者たちはまず首都ザグレブや東部のオシエク、北部のヴァラジュディン、アドリア海のツレス島など、国内の8つの土地の家庭に分かれて1週間を過ごしました。キャンプの前に家庭で暮らし、クロアチアの普段の生活を知ってから仲間と合流する順番です。

ライオンズが家庭向けに出した2026年の募集の案内には、迎える家庭の役割が具体的に書かれています。部屋と食事を用意し、できれば同じ年ごろの子どもと同じ部屋にすること。空港や駅への送り迎えや、行事への送り迎えも受け持つこと。そして、自分の子どもが皿を片づけたり掃除機をかけたりしているなら、お客さんとしてではなく家族の一員として、同じように手伝ってもらうこと。案内は、家族の暮らしをまるごと体験してもらうことが、この交流の目的だと結んでいます。
キャンプの開会式では、参加者たちが口々に、家庭でのもてなしが今回いちばんの思い出の一つになったと話したそうです。最初の1週間が、その後の8日間を気持ちよく過ごすための土台になっているということが伺えます。
最初の2日間は、仲間づくりから
ポレチでの開会式では、クロアチアの地区のガバナー(地区のまとめ役)であるミルヤナ・チュセク・スルニスキさんが若者たちを迎えました。参加者にはキャンプのTシャツと協賛者からの贈り物が配られ、最初の2日間は、チームづくりや信頼、伝え合いをテーマにした話し合いと体験の時間にあてられました。ライオンズとレオの活動の紹介もあり、ガバナーからは、ボランティアや奉仕の意味について話がありました。

地元の新聞「グラス・イストレ」は、キャンプでの学びを、伝え合い方や、人とのちがい、文化のちがいを理解することについての話し合いだと伝えています。世話役が年の近い若い会員であることも、こうした話し合いを進めやすくしているのでしょう。
船でロヴィニへ、各国のライオンズと
7月28日の火曜日、若者たちは責任者のユーゴヴァツさんが持つ船「聖マウロ号」に乗り、イストラ半島の海岸を南へ向かいました。最初に立ち寄ったのは、古い町並みが残る港町ロヴィニです。丘の上に立つ聖エウフェミア教会からのながめに、若者たちは特に心を動かされたといいます。船はそのあと、細長い入り江のリム湾をめぐり、夕方にはヴルサルの町で泳いで、アイスクリームを楽しみました。ポレチの岸に戻ると、市長のロリス・ペルシュリッチさんが出迎えてくれました。

この日の船には、クロアチアのライオンズの会員に加えて、隣の国スロベニアの地区のガバナーや、イタリアのライオンズの代表、クロアチアのレオクラブの会員も乗っていました。クロアチアのロータリークラブの次期ガバナーも招かれ、ロータリーとライオンズはライバルではなく、地域のために一緒に働く仲間だと語りかけました。この言葉は、若者たちに特に響いたそうです。ニュースは、国をこえた協力が新しい友情や奉仕につながることを、若者たちが目の前で見る機会になったと伝えています。
2日後の木曜日は、イストラ半島で人気の大きなプール施設「イストラランディア」で一日を過ごしました。ニュースによると、若者たちにとってこの2日間は、キャンプの中でも特にすばらしい日になったようです。
高齢者の施設で庭を整え、市長に質問する
このキャンプで毎年続いているのが、ポレチの高齢者の施設を訪ねる奉仕の日です。施設の園長サンドラ・チャキッチ・クハルさんは、キャンプの若者が来ると、職員も暮らしている人たちもいつも喜ぶ、新しい言葉が聞けて新しい体験ができるから、と話しています。参加者はこれまでも毎年、何かの作業を受け持ってきました。2026年は施設の庭や周りを整えました。

作業のあとは、施設で暮らすお年寄りたちとの時間です。若者たちはそれぞれ自分の国の言葉で自己紹介をし、キャンプで練習してきたいくつもの国の踊りを披露しました。お年寄りたちは一緒に踊り、笑ったそうです。そのあとは会話が続き、それぞれの国でお年寄りがどんなふうに暮らしているのかを語り合いました。
同じ日、若者たちは市役所を訪ね、大会議室でペルシュリッチ市長の歓迎を受けました。市長が町のあらましを説明すると、若者たちからは、町の暮らしを支える公共の仕事や、困っている人を支える取り組みを市がどう進めているのかといった質問が出ました。グラス・イストレによると、話題は町の発展や教育、スポーツ、観光、ふだんの暮らしにまで広がりました。2025年の地元ニュースでも、参加者が10ほどの質問を投げかけたと伝えられていて、市役所での対話も毎年の恒例になっているようです。
奉仕の場と町の仕組みを知る場を同じ日に並べることで、町を観光客としてではなく、そこで暮らす人の目で見る一日になっていることが伺えます。
「これで閉会です」の一言で
キャンプの最後の日、宿の前に若者たちと世話役、ポレチとノヴィグラドのライオンズクラブの会員が集まりました。若者たちは、参加者の国のいくつかの踊りを組み合わせた出し物を見せ、参加者全員の国の言葉を少しずつ覚えて、最後はクロアチア語であいさつをしました。地区の第1副ガバナーのジェリコ・グツンスキさんが修了証を手渡し、ガバナーもオンラインでお祝いの言葉を送りました。

責任者のユーゴヴァツさんが「これでキャンプを閉会します」と告げると、若者たちは泣きながら抱き合ったといいます。ポレチのクラブの会員は、毎年お別れはつらいけれど、8日間の遊びと学びと旅でここまで近くなった今年のグループは特別で、一生の友情になるだろうと書いています。
送り出すことと迎えることを一緒に考える
クロアチアのライオンズは、海外の若者を迎えるだけでなく、自分の国の若者も送り出しています。2026年は17〜22歳の18人が、フランスやイタリア、アイスランド、アメリカ、そして日本など、11の国へ出かけました。

送り出す若者を募る2026年の案内には、選び方の考え方も書かれています。クラブは自由に候補を選べるものの、ライオンズの会員の子どもに限らず、学業や奉仕で力を発揮している若者や、家庭の事情で海外に行く機会が少ない若者にも広く機会を届けたい、としています。また、希望が重なったときは、初めて参加する人、早く書類をそろえた人、そして海外から来る若者を自分の家庭で迎えられる人を優先するそうです。送り出す家庭が次の夏の受け入れ先にもなることで、迎える力と送り出す力が一緒に育っていくしくみなのでしょう。
このキャンプから学べること
もしあなたが高校生なら、2025年のちらしでは17歳から参加できるキャンプです。言葉は英語で、ちらしには、泳ぐことやスポーツ、自分の国の紹介の時間があると書かれています。このキャンプでは、高齢者の施設でも最後の日の出し物でも、それぞれの国の踊りや言葉が活躍しました。日本の踊りを一つと、日本語のあいさつをみんなに教えられるように準備しておくと、きっと出番があるでしょう。市長に何を聞いてみたいか、日本の自分の町と比べながら考えておくのもおすすめです。

保護者の方にとって気になるのは、家庭での1週間でしょう。2026年は、家庭が国内の8つの土地に散らばっていて、どの町の家庭に迎えられるかで過ごし方も変わりそうです。2025年のちらしでは、参加費は400ユーロで、交流の期間すべてをカバーする医療と賠償責任の保険に入ることが必要とされています。申し込みは、日本のライオンズの青少年交流の担当者を通して行います。2025年の締め切りは3月15日でした。
ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、地元の施設や市役所と、毎年訪ねる関係を育てていることです。高齢者の施設が「いつも楽しみにしている」と言ってくれるのは、毎年同じ時期に若者を連れていき、作業を受け持ってきた積み重ねがあるからでしょう。船の日に近くの国のライオンズやロータリークラブまで招いたように、キャンプを地区の外の人たちとつながる場にもしています。日本のクラブがキャンプを開くときにも、地元の施設や役所と毎年の約束をつくっておくことは、すぐに取り入れられそうです。
補足
- 2026年の日程、家庭のある土地、クロアチアから送り出した若者の人数と行き先は、クロアチアのライオンズのニュース(2026年7月21日)によります。参加者の数「13の国から23人」は、グラス・イストレの報道(2026年7月31日)によります。7月21日のニュースでは11の国が挙がっていて、報道ではデンマークとフランスが加わっています。
- 開会式、船の日、イストラランディア、高齢者の施設と市役所の訪問、閉会式の様子は、クロアチアのライオンズのニュース(2026年7月27日から8月2日)によります。2025年のキャンプが7回目のポレチ開催だったことと、市役所での質問の数は、地元のニュースサイト「パレンティウム」(2025年7月28日)によります。
- 年齢、定員、参加費、言葉、保険、締め切りは、2025年のキャンプのちらし(PDF)によります。ちらしはイタリアのライオンズの青少年交流のサイトに載っているものを参照しました。2026年の条件は、申し込みの際に確かめてください。迎える家庭の役割は2026年の家庭向けの募集の案内、送り出す若者の選び方は2026年の募集の案内(PDF)によります。どちらもクロアチアのライオンズのサイトに載っています。
- 写真は、キャンプの会場となったポレチの港のながめです(HR -Porec2、撮影 Holger Behr、2008年、Wikimedia Commons、パブリックドメイン)。キャンプの写真ではありません。トリミングと明るさの調整をしています。
※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。
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