首都から35キロの、森と湖のキャンプ
YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先の家庭やキャンプで暮らします。フィンランドでは2026年の夏、国内の3か所で国際キャンプが開かれました。東部パリッカラの「Spirit of Karelia」、ラウタヴァーラの「Lakeland Vibes」、そして首都圏のエスポーで開かれたのが、この「Urban wild in Solvalla」です。
会場の「ソルヴァッラ」は、フォルクヘルサンという団体が運営するスポーツ施設で、フィンランドに9つある国のスポーツ研修施設の一つです。ヘルシンキの中心から約35キロ、ヌークシオ国立公園のすぐとなりにあり、施設の案内は、南フィンランドでは特別な、手つかずの自然に囲まれた場所だと紹介しています。湖のほとりには15人が入れる大きなサウナと桟橋があり、カヌーやカヤックも借りられます。施設の案内には、スウェーデン語を中心にした温かい環境とも書かれていて、フィンランドが2つの言葉を持つ国であることも感じられる場所です。
公式の案内は、このキャンプを「千の湖の国」「世界でいちばん幸せな人たちの国」の夏として紹介しています。予定に挙がっているのは、泳ぐこと、カヤック、テントでの宿泊、陸上競技、チームでの球技、ハイキング、そしてサウナです。夜は湖のほとりでたき火を囲むとあります。キャンプの名前にある「都会のそばの野生」という言葉のとおり、首都から近いのに深い森と湖に囲まれていることを、いちばんの魅力にしているのでしょう。
最初の8日間は、フィンランドの家庭で
オーストリアの地元紙「ティップス」は2026年10月、このキャンプに参加したノラ・ケプリンガーさんの体験を伝えています。ノラさんはオーバーエスターライヒ州のリヒテナウに住み、ロールバッハのギムナジウム(大学進学を目指す高校)の7年生です。ライオンズの青少年交流で、夏の3週間をフィンランドで過ごしました。出発の何か月も前から、キャンプの責任者と連絡を取り合っていたそうです。
最初の8日間は、ホストマザーのもとで暮らしました。「すぐに毎日の暮らしの中に入っていけた」とノラさんは話しています。湖のほとりにある夏の家と、ヘルシンキのアパートを行き来しながら、一緒にベランダのペンキを塗り、農家の市場に出かけ、まわりの土地を歩いてまわりました。生まれて初めてのサウナも、この家庭で体験しています。台所ではフィンランドの料理とオーストリアの料理を作り合いました。芸術が好きなノラさんは、ヘルシンキの建物の美しさや、首都なのに静かで緑が多いことが印象に残ったと話しています。
観光地をめぐるのではなく、ペンキ塗りや買い物といった家の用事を一緒にこなしているところに、家庭での滞在らしさが表れています。キャンプの前にフィンランドの暮らしの中に入っておくことで、湖畔での毎日もぐっと身近に感じられたということが伺えます。
13の国の仲間と、サウナと湖の毎日
ソルヴァッラのキャンプで、ノラさんはほかに30人の若者と出会いました。ドイツ、イタリア、アメリカ、ブラジル、そして日本など、13の国から集まった仲間です。記事によると、グループはとても早く一つにまとまったといいます。
毎日の中心は、森と湖でした。みんなでハイキングに出かけ、カヌーをこぎ、夜はたき火を囲みます。サウナにもくり返し入り、温まった体を湖で冷やしました。フィンランドの夏らしい過ごし方を、施設の目の前の湖で毎日のように味わえたわけです。森の外へも出かけ、アールト大学や博物館、鉱山を訪ねています。
ある晩には、一人ひとりが自分の国を紹介する時間もありました。それでもノラさんは、「その晩よりも、一緒に暮らしたことのほうが、ほかの国についてずっと多くを知ることができた」と振り返っています。発表の場よりも、同じサウナに入り、同じ食卓を囲む時間のほうが、相手の国を知る近道だったのでしょう。
「思っていたより、ずっと似ている」
3週間をふり返って、ノラさんは「まばたきするくらい短かったのに、みんなとはずっと前から知り合いだったように感じる」と話しています。そして、いちばん心に残ったこととして、「いろいろな違いはあっても、私たちは思っているよりずっと似ている」という言葉を挙げました。
これから参加する人へのことばも残しています。「最初の一歩には少し勇気がいるけれど、そのあとは何の問題もない」。英語での共同生活や、知らない家庭に入ることに不安があっても、踏み出してしまえば仲間がいる、ということを伝えたかったのでしょう。
20年近く若者を送り出してきたクラブ
記事は、地元ロールバッハ・ベーマーヴァルトのライオンズクラブの取り組みも紹介しています。このクラブでは、ハラルド・ドーバースベルガーさんが妻のアンドレアさんと一緒に、20年近く青少年交流の世話役を続けています。2008年からの間に、海外へ送り出した若者は98人、迎えた若者は107人にのぼります。
このクラブでは、交流にかかるお金は、旅費と、場合によってキャンプの参加費、そして自分のおこづかいです。そのかわりに、送り出された若者の家庭は、次の年に海外から来る若者を1週間迎えることを約束します。送り出した数より迎えた数のほうが多いのは、この約束が長く守られてきたからということが伺えます。
ドーバースベルガーさんは、若者たちには世界がどれほど美しく、どれほど平和でありうるかを見てほしいと話しています。民主主義は、互いに話し合い、ほかの意見や文化を受け入れるところから始まる、とも。多くの若者が交流のあとも連絡を取り合っていて、「このつながりはお金では買えない」と語っています。
このキャンプから学べること
もしあなたが高校生なら、このキャンプは16歳から参加できます。言葉は英語です。ノラさんのように、出発前からキャンプの責任者と連絡を取っておくと、当日の不安がだいぶ軽くなりそうです。サウナのあとで湖に入る毎日なので、水着とタオル、夜の湖畔で着る上着は欠かせません。自分の国を紹介する晩に向けて、日本の家庭料理のレシピを一つ用意しておけば、家庭での滞在でもきっと役に立つでしょう。
保護者の方にとって気になるのは、家庭での8日間と費用でしょう。2026年の日程では、家庭での滞在が7月12日から20日まで、キャンプが20日から31日までで、キャンプの参加費は100ユーロです。申し込みには推薦してくれるライオンズクラブが必要で、日本からは、ライオンズの青少年交流の担当者を通してフィンランド側に申し込みます。2026年の夏の締め切りは3月15日でした。
ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、送り出すことと迎えることを、一つの約束として家庭に引き受けてもらうやり方です。ロールバッハのクラブは、送り出した家庭に次の年の受け入れをお願いすることで、20年近く交流を続けてきました。フィンランドの側でも、キャンプの前の家庭での滞在を支えているのは、ライオンズが募っている地元の家庭です。日本のクラブが若者を送り出すときにも、次の年に迎える側にまわってもらう約束をあわせて考えておくと、交流が一度きりで終わらずに続いていくはずです。
補足
- 2026年の日程、会場、年齢、定員、参加費、言葉、予定の内容は、キャンプの公式ページによります。同じ内容は、フィンランドのライオンズの2026年の夏のキャンプの案内と、ベルギーのライオンズの青少年交流のサイトにも載っています。申し込みに推薦のクラブが必要なことと、2026年の締め切りは、フィンランドのライオンズのユースキャンプのサイトによります。
- ノラ・ケプリンガーさんの体験、参加者の数と国、ロールバッハ・ベーマーヴァルトのライオンズクラブの取り組みと人数は、オーストリアの地元紙「ティップス」(2026年10月26日)によります。「13の国」「ほかに30人」はこの記事の数字で、公式ページの定員とは数え方が違う可能性があります。本文中のことばは、記事のドイツ語を日本語に訳したものです。
- 会場の施設の説明(国に9つあるスポーツ研修施設の一つであること、ヘルシンキからの距離、サウナと桟橋、カヌーとカヤック、自然の様子、スウェーデン語の環境)は、フォルクヘルサンの施設の案内によります。
- 写真は、会場のとなりにある湖ピトカヤルヴィのながめです(Nuuksion Pitkäjärvi, Espoo、撮影 Jie Yang、Wikimedia Commons、CC BY 3.0)。キャンプの写真ではありません。トリミングをしています。
※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。
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