「1つの週、1つのキャンプ、1つの世界」
YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先の家庭やキャンプで過ごします。ウィスコンシン州のライオンズの青少年交流のサイトは、この交流が1961年に始まり、若者が最長6週間ほど海外の家庭で暮らしながら、新しい文化や暮らし方、習わしにじかにふれる仕組みだと紹介しています。そして、観光でも、留学でも、仕事でもないとはっきり書いています。
サイトのいちばん上には、キャンプ・ビスタの合い言葉として「1つの週、1つのキャンプ、1つの世界」が掲げられ、目的として「世界の人々のあいだに理解の心を育てること」という一文が添えられています。キャンプ・ビスタには、ヨーロッパやロシア、アジア、太平洋の国々、タヒチ、メキシコ、中南米から、ふだんから25を超える国の若者が集まってきたそうです。海外へ行かずにキャンプを体験してみたいアメリカの若者も参加できます。
サイトには、フィンランド、メキシコ、オランダから参加した若者の声も載っています。食事がとてもおいしかったこと、これからお互いの国を訪ね合うつもりであること。そして、たくさんの国の人がいたので、一度に全部の国を旅しているようだったという言葉です。1週間という短い時間に、世界の広さをぎゅっと詰めこんだキャンプであることが伺えます。
森と湖のキャンプ場で、みんなで暮らす
キャンプ・ビスタがあるのは、ウィスコンシン州東部のノーザン・ケトル・モレーン州立森林です。キャンプ場の広さはおよそ350エーカー(約140ヘクタール)で、敷地の中に小さな湖まであります。泊まるのは16〜32人用の5つの宿舎で、ほかに工作のための小屋、中心となる建物と食堂、シャワー設備、運動場があります。
キャンプの暮らしの紹介でまず目にとまるのは、皿洗いや掃き掃除、モップがけといった小さな当番を、全員が受け持つと書かれていることです。お客さまとして迎えるのではなく、一緒に暮らす仲間として迎える。その考え方が、こうした当番にも表れているのでしょう。
楽しい時間もたくさんあります。参加者は、こっそり決めた相手のために工作で贈り物をつくります。暑い日にはシーダー湖で泳いだりカヌーに乗ったりし、運動場ではスポーツや遊びで体力を試します。天気がよければ、夜はたき火を囲んで歌い、マシュマロを焼き、物語を語り合います。国ごとのグループは、自分の国の人口や文化を紹介する短い発表をします。
アイバンクを訪ね、地元のクラブとピクニック
サイトには、2025年のキャンプの日ごとの予定表が載っています。日曜日の午後に若者たちが到着し、知り合うための遊びやキャンプ場の案内、アメリカの紹介、水泳の試験から始まります。月曜日にはアメリカ先住民の文化を紹介する時間があり、夜はたき火を囲みます。
週の半ばには、バスで州都マディソンへ出かけます。行き先は、ウィスコンシン州のライオンズのアイバンクです。アイバンクは、亡くなった人から提供された角膜を、目の病気に悩む人の移植につなぐ施設で、ライオンズは目の不自由な人の支援に長く取り組んできました。そのあとは、近くの町マーシャルのライオンズクラブとレオクラブと一緒にピクニックをします。サイトはこの日帰り旅行を「いつも1週間のハイライト」と紹介しています。楽しいだけでなく、迎えてくれているライオンズが地元で何をしているのかを、自分の目で見る一日になっているようです。
木曜日はキャンプに来客を迎える日です。チーム対抗の「アンオリンピック」というスポーツ大会があり、夕食は地区のガバナーや副ガバナーたちと一緒にとります。予定表には、盲導犬の育成団体の名前「リーダー・ドッグ」や、世界について語り合う時間も書かれています。金曜日は屋外での料理と魚のフライ、アンオリンピックの表彰、全員での記念写真のあと、夜はダンス。土曜日はキャンプの記念の本と映像づくりや、得意な芸を見せ合う会があり、片づけが始まります。
そして最終日の日曜日、朝9時半に家庭の人たちが若者を迎えに来ます。予定表のこの日の欄には、「涙を流す時間!」とひとこと添えられています。
台所から医療まで、みんなボランティア
キャンプの暮らしの紹介によると、キャンプを支えるのは、台所の担当、男女のカウンセラー(若者のリーダー役)、医療の担当で、すべてボランティアです。カウンセラーは全員が心肺蘇生の講習を受けていて、救急隊員の資格を持つ人もいます。医療の担当には看護師がいて、台所は、ほとんどの食事の制限に合わせられるプロのシェフが仕切ります。湖で泳ぐ時間を見守る水辺の監視員も、資格を持った人です。
2026年のカウンセラー募集の案内を読むと、リーダー役の顔ぶれも見えてきます。カウンセラーは8〜14人で、多くは18〜29歳。2人の経験あるリーダーのもとで活動を進め、アンオリンピックでは自分のチームを率います。彼ら自身も、それぞれの国を代表する一員だと書かれています。湖があるので水辺の監視員が毎年1〜2人必要で、資格がなくても取る気があれば、その費用を交流の側が負担するそうです。
案内には、「キャンプは参加するすべての人に無料で、食事も宿泊も楽しいことも、ウィスコンシン州のライオンズがまかなっている」とあります。サイトのトップにも、キャンプのリーダー役になるのも参加者と同じくらい楽しい、という呼びかけがあります。参加者の年齢を過ぎた若者が、次はリーダー役としてキャンプに戻ってくる。そうした流れが、無料のキャンプを毎年続けられる力になっているのでしょう。
迎える家庭は、ライオンズの会員でなくてもいい
キャンプの前後、若者たちは州内の家庭で暮らします。迎える家庭の募集ページには、地元のクラブの確認を受ければ、どの家庭でも迎える側になれると書かれています。ライオンズやレオの会員の家庭である必要はありません。子どものいない家庭や、年配の夫婦だけの家庭でもかまいません。近所の人や親戚と分担して迎えることもできますし、若者に一人部屋を用意する必要もなく、同性の家族と部屋を分け合うのはかえってよいこともある、とされています。
暮らし方についての考え方は、はっきりしています。若者を家族の毎日の暮らしに加え、特別扱いはしない。家の手伝いは一緒に分け合う。ただし、子守りや住みこみのお手伝いのように頼ってはいけない。毎年若者を迎えているという夫婦は、「毎年迎える若者と自分たちの暮らしを分け合いながら、世界の暮らしを知ることができる」と語っています。
サイトのトップには、10代の子どもがいる家庭の多くは、わが子に別の文化を知ってほしくて海外の若者を迎えるとも書かれています。迎えた若者の国のキャンプに、あとで自分の子どもが出かけていくことも多いそうです。オーストリアから来た若者と親友になった女の子の、「人生でいちばんの時間を過ごしている」という言葉も紹介されています。迎えることが、そのまま次の旅の入り口になっていることが伝わってきます。
持ち物リストに見える、キャンプの1週間
キャンプは2026年4月に改めた「おすすめの持ち物リスト」も公開しています。軽いハイキングもできる歩きやすい靴と運動靴、シャワー用のサンダル、水着、ジーンズ、パーカー、雨具。夜のダンスのための服。毛布やシーツ、枕、タオルは、迎えてくれる家庭から借りてくるように書かれています。
ほかにも、自分の国を紹介するための、その国らしい品物や食べ物、服、地図やお土産。キャンプの記念のTシャツは配られ、バス旅行の日には着ることになっています。薬はすべてキャンプの看護師が預かって渡すこと、貴重品はキャンプの保管所に預けられること、マディソンへの日帰り旅行のために1食分とおやつのお金を持ってくること、といった細かな点も並んでいます。リストを読むだけで、1週間の暮らしがかなり具体的に思い浮かびます。
このキャンプから学べること
もしあなたが高校生なら、このキャンプは17歳から参加できる行き先の一つです。キャンプでは国ごとに自分の国を紹介する時間があるので、日本の暮らしや学校、食べ物を短く伝えられるように、写真や小さなお土産を用意しておくとよいでしょう。皿洗いや掃除の当番もあるので、最初の日から自分から手を動かす気持ちで行くと、ほかの国の仲間とも早く打ち解けられるはずです。キャンプの前後には家庭での暮らしもあり、ここでも特別扱いはせず、家族の一人として過ごしてもらうことが大事にされています。
保護者の方にとって安心材料になるのは、看護師や救急隊員の資格を持つ人がいて、薬はすべてキャンプの看護師が預かること、湖で泳ぐ前には水泳の試験があり、資格を持った監視員が見守ることでしょう。一方で、キャンプ自体は無料でも、海外への航空運賃や保険などの費用は送り出すクラブの側の負担で、クラブと本人、家族で分け合うこともあると書かれています。おこづかいは自分で用意します。どこまでを誰が受け持つのか、送り出してくれるクラブと早めに確かめておくと安心です。
ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、キャンプそのものを、ライオンズの活動を知ってもらう場にしていることです。アイバンクの見学、地元のクラブやレオとのピクニック、ガバナーたちとの夕食と、若者たちは1週間のうちに州のライオンズのさまざまな顔に出会います。運営をボランティアで支え、元参加者の若者がリーダー役として戻ってくる流れも参考になります。また、迎える家庭を会員の家庭に限らず、子どものいない家庭や近所での分担まで認めていることは、日本のクラブが受け入れ先を探すときにも考えてみる価値がありそうです。
補足
- 2026年の日程、参加者の人数と年齢、国の数、カウンセラーの人数と年齢、無料であること、水辺の監視員の資格の費用は、2026年のカウンセラー募集の案内(PDF)によります。参加者の人数と国の数は、案内に書かれた見込みの数です。キャンプ・ビスタがふだんから25を超える国の若者を迎えてきたことや、参加者の声、合い言葉と目的は、公式サイトのトップページによります。
- キャンプ場の様子、当番、日々の活動、ボランティアの顔ぶれ、日ごとの予定は、公式サイトの「キャンプの暮らし」のページによります。日ごとの予定は2025年(8月10日から17日まで)のもので、2026年の予定は年によって変わることがあります。アイバンクの説明は編集部によるものです。
- 迎える家庭の条件と暮らし方は、公式サイトの「迎える家庭」のページを、参加のしかたと費用の分担は「交流に参加したい人へ」のページを日本語に要約したものです。持ち物は、2026年4月1日付の「おすすめの持ち物リスト」(PDF)によります。
- 写真は、キャンプのバス旅行の行き先である州都マディソンの中心部で、正面に見えるのはウィスコンシン州議会議事堂です(Wisconsin State Capitol, Capitol Square, Madison, WI、撮影 Warren LeMay、2022年9月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 2.0)。トリミングと明るさの調整をしています。
※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。
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同じ北アメリカのキャンプとして、砂漠の州をバンで南へ北へ、創設者の生家にも——米アリゾナ州のライオンズ青少年交換キャンプと、種を集めて、馬に乗る。ウォータートンの山の一週間があります。