障がいのある人のための、世界最大の冬のスポーツ週間

YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が1961年から続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブなどの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先のライオンズクラブに迎えられます。ノルウェーのライオンズは毎年いくつかのキャンプを開いていて、そのうちの一つが、この「Lions Camp Beitostølen」です。

キャンプの舞台は「リッデルーカ(Ridderuka)」と呼ばれる1週間です。ノルウェー語で「騎士の週」という意味で、目や体に障がいのある人が、クロスカントリースキーやバイアスロン、アルペンスキー、スノーボードを習い、大会にも出ます。スキーのほかに、凧に引かれて雪の上を進むスノーカイトや、ヨガ、護身術も試せます。夜はみんなで集まる会やお笑いのステージ、クイズ大会、特技を披露する会、コンサートが続きます。週の最後を飾るのが、伝統のクロスカントリースキーの大会「リッデレンネ(Ridderrennet)」です。

参加するのは、初めてスキーをはく人から経験を積んだ選手まで、10代から高齢の人までさまざまです。大会を開く団体(Foreningen Ridderrennet)によると、ここ数年は毎年400〜500人ほどが、10〜15の国から集まっています。ライオンズのキャンプの参加者は、この大きな催しに若者のグループとして加わる形です。自分たちだけで一からキャンプを組み立てるのではなく、長い歴史のある催しに若者を招き入れているところに、このキャンプの特徴があるといえるでしょう。

目の見えないスキー選手が始めた大会と、ライオンズ

最初のリッデレンネは、1964年4月12日の日曜日に開かれました。始めたのは、目の見えないノルウェーのスキー選手で音楽家の男性です。目が見えなくてもスキーの大会に出られるはずだ、という考えに軍が応え、最初の大会では100人近い兵士が雪上車などを使ってコースの安全を支えました。当時の国王が大会を開き、最初の2人の選手を送り出したことも、大会の歴史として紹介されています。

この男性は、地元のライオンズクラブの会員でもありました。ライオンズの年次大会を訪ねて、目の見えない人のためのスキー大会の考えを語ったところから、ライオンズとの協力が始まったといいます。1966年には、ノルウェーのライオンズが全国で行う募金活動の最初の回が、障がいのある人がスポーツを通して心と体を整える施設「ベイトストーレン健康スポーツセンター」の建設に充てられました。キャンプの参加者が練習するクロスカントリーのコースは、このセンターにあります。

ノルウェーのライオンズの会報によると、クラブが大会のために出すお金は、毎年50万〜60万ノルウェークローネにのぼります。大会を開く団体はライオンズを「もっとも大切な支援者」と呼んでいて、2024年に60周年を迎えたいまは、ライオンズも大会の運営の中心となる委員会に加わっています。キャンプは、60年かけて育ててきた関係の上に成り立っていることが伺えます。

1人に1人、スポーツを学ぶ学生が付き添う

キャンプの参加者には、希望すれば無料で付き添いの案内役がつきます。案内役を務めるのは、ノルウェーの体育大学やスポーツを学ぶ学校の学生たちです。割り当てや研修はノルウェー体育大学が受け持ち、選手と案内役は1週間を通して、選手が選んだ種目の練習や大会に一緒に出ます。

クロスカントリーとバイアスロンは、健康スポーツセンターにある、障がいのある人に合わせて整えたコースで練習します。コースまでは無料の送迎バスで少しの距離です。アルペンスキーとスノーボードは、町の中心にあるリフトのそばのゲレンデで行います。スキーなどの道具は借りられ、経験がなくても参加できると、大会の案内は伝えています。

空港からの移動も用意されています。到着の日と出発の日には、オスロの空港か、オスロやベルゲンとのあいだを結ぶ送迎が出ます。費用の分け方もはっきりしています。キャンプでの滞在の費用はノルウェーのライオンズがすべて持ち、参加費もかかりません。自分で用意するのは、ベイトストーレンまでの往復の旅費です。練習や大会以外の時間にも手助けが必要な場合は、介助してくれる人を自分の費用で連れて行きます。

21歳の参加者が過ごした1週間

2025年の週間は、3月30日から4月6日まで開かれ、およそ400人が参加しました。ライオンズのキャンプを通して初めて参加した一人が、アメリカのノースカロライナ州から来た21歳の女性です。両親と兄弟の一人が旅に付き添いました。きっかけは、ジョージア州のライオンズの知り合いが「ノルウェーのライオンズが、障がいのある若者の参加を後押ししている」と教えてくれたことだったそうです。

彼女には生まれつき脳性まひがあり、体を思うように動かすことが難しいため、クロスカントリーは苦手です。けれども、アルペンスキーの板をはくと「できる」という手応えが一気にわいてくる、と話しています。いちばん気に入ったのはアルペンスキーのゲレンデで、犬ぞりで雪山を走ったことも、においや犬たちの姿、静けさまで含めて、忘れられない体験になりました。

「自分に挑戦するのが好き。ここでは、楽しくて少し危ないこともさせてもらえた。それが新鮮で、すごく元気が出る」。ノルウェーは、ほかの国より障がいのある人を受け入れてくれる国に感じられ、より尊重されていると感じた、とも話しています。1週間ずっとそばにいたのは、ノルウェー体育大学で学ぶ案内役の学生でした。家族は、キャンプの責任者と、この学生への感謝を伝えています。案内役が付き添うことで、危なすぎない範囲で一歩踏み出す挑戦を支えているのでしょう。

ライオンズの会員は、空港で迎え、空港で見送る

週間のあいだ、ノルウェー各地のライオンズの会員がボランティアとして動いています。2023年の会報では、オスロの空港での出迎えと見送りをオスロ近郊のクラブが、会場でのバーベキューを地元ヴァルドレス地方のクラブが受け持ち、別のクラブの会員は1週間通して手伝ったと紹介されています。大会を開く団体は、交通の拠点での出迎えと見送りをライオンズの役目としたうえで、「多くの参加者にとって、最初に迎え、最後に旅の無事を祈るのはライオンズのボランティアだ」と書いています。

若者に向けた工夫もあります。2023年には、若者のグループの参加者から一人を選んで贈る新しい賞が生まれました。賞の名は「雪のライオン」で、強さと勇気と喜びを表します。最初の年に選ばれた若者は、新しいことに思い切って挑戦し、仲間を励ましたことが評価され、次の年は無料で参加でき、友だちを1人連れて来られることになりました。

呼びかけは国境をこえています。ドイツのライオンズの財団や、デンマークのライオンズクラブも、自分たちの国の障がいのある若者に向けてこのキャンプを紹介しています。デンマークのストルーアのクラブは、2025年の募集で、会員が申し込みの相談に乗ると呼びかけていました。

このキャンプから学べること

もしあなたが高校生で、体や目に障がいがあるなら、このキャンプは「自分にも行ける海外」の一つになるかもしれません。参加できるのは18歳からです。3月中旬という時期は、18歳になった高校3年生なら、卒業式のあとに重なります。スキーの経験は問われません。求められるのは、体を動かすことを楽しむ気持ちと、英語でやりとりできることです。いきなり海外の大会が不安なら、まずは身近な障がい者スポーツの体験会で雪や道具にふれておくと、現地で挑戦できる種目が広がるはずです。

保護者の方が気になるのは、付き添いと費用でしょう。練習と大会には学生の案内役がつきますが、それ以外の時間に介助が必要な場合は、介助者を自分たちで手配して連れて行くことになります。キャンプでの滞在の費用はかからない一方で、往復の航空券や海外旅行の保険、介助者を連れて行く場合はその旅費が家族の負担になります。2026年の申し込みの締め切りは3月5日でした。申し込みには、地元のライオンズクラブか、ほかの団体が責任を持つことが必要です。日本からなら、まずは地元のライオンズクラブに相談するのが近道でしょう。航空券などの準備にかかるお金の考え方は、参加費のほかに、何のお金がいる?にまとめています。

ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、地域にすでにある催しに、若者の交流を組み合わせるやり方です。案内を読むかぎり、会場や競技の指導、案内役の学生は、大会を開く団体や体育大学、健康スポーツセンターが整えています。ライオンズが受け持っているのは、お金を集めること、空港での出迎えと見送り、そして世界から若者を招くことです。自分たちが得意なことを担い、ほかは任せる。日本でも、地域で長く続く障がい者スポーツの大会や、お祭りと組み合わせれば、来日生を迎えるキャンプの新しい形がつくれるかもしれません。

補足

  1. 2026年の日程、参加の条件、費用、案内役と送迎の仕組みは、ノルウェーのライオンズが公開している2026年のキャンプ案内によります。
  2. 大会の歴史と、ライオンズの支援の内容は、大会を開く団体の公式サイトと、ノルウェーのライオンズの会報によります。参加者の数は年や資料によって「400〜500人」「およそ450人」と幅があるため、本文では幅を持たせて書いています。
  3. 2025年の参加者の体験は、ノルウェーのライオンズの会報(2025年秋号)の記事によります。参加者や家族、クラブの会員の名前は省いています。
  4. このキャンプは「Lions Camp Knights of the Light」とも呼ばれています。大会の名前にある「騎士」にちなんだ呼び名なのでしょう。
  5. 写真はベイトストーレンのゲレンデから町を見たものです(Beitostølen, view towards town centre、撮影 Lipothymia、2006年4月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0)。トリミングと明るさの調整をしています。

※日程や費用、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。

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