「自然は、生きるための資源をくれる」

YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先のキャンプや家庭で過ごします。ノルウェーのライオンズは、毎年3つの国際キャンプを開いています。体や目に障がいのある若者を冬に迎えるキャンプ、平和をテーマにしたキャンプ、そしてこのハルダンゲルヴィッダのキャンプです。

キャンプの案内は、ライオンズのいちばんの目的を「人と人、国と国のあいだの理解を深めること」と書き、こう続けます。世界の若者は人類の未来であり、自然は人が生きるための資源をくれる。だからこそ、若者と自然を、美しくも傷つきやすい高原で出会わせたい。目指すのは、参加者が外で過ごす喜びを味わいながら、自分たちの暮らしを支えている自然への敬意を育てることだそうです。ちらしには「自然も、課題も、未来も共有するもの。そして喜びも」という言葉も添えられています。

いろいろな国の若者が集まるキャンプは多くありますが、ここでは自然そのものが、もう一人の主役になっています。国の違いを越えて分かり合うことと、自然を大切にすることを、同じ2週間の中で体ごと学ぶ場として考えられていることが伺えます。

北ヨーロッパでいちばん広い高原

ノルウェーの国立公園の公式サイトによると、ハルダンゲルヴィッダは北ヨーロッパでいちばん広い高原で、その約半分が国立公園になっています。国立公園の広さは3,445平方キロメートル。ノルウェー本土でいちばん大きな国立公園です。どこまでも続くような手つかずの景色が広がり、湖や川も多く、ヨーロッパで最大の野生のトナカイの群れがすむ場所でもあります。いちばん歩きやすいのは7月と8月だそうで、キャンプが夏に開かれるのもうなずけます。

キャンプの拠点は、高原にある大きな山小屋「トローストーレン」です。ライオンズ・ノルウェーの行事案内には、この山小屋をライオンズが財団を通して持ち、運営していると書かれています。ライオンズが自分たちの山小屋を持ち、そこを若者の国際キャンプに使っているというのは、ほかのキャンプではあまり見かけない形です。

地図とコンパス、網、そしてテント

活動はすべて屋外です。案内には、かつて探検家たちが訓練の場にしてきた場所を訪ねる、と書かれています。ちらしに挙げられた活動を読むと、2週間の様子が見えてきます。地図とコンパスを使って自分の位置を確かめる練習。魚釣りと、網を仕掛けての漁。高原でテントに泊まる夜。ハイキング。地元のライオンズクラブの訪問。近くの見どころの見学と、山あいの町ゲイロでの買い物。そして特別な体験として、ヌメダルスローゲン川での川下りがあります。

テントの夜について、ちらしの写真には、ハルダンゲルヴィッダで「ラヴォ」に泊まる様子が添えられています。ラヴォは、北欧の先住民族サーミの人々が使ってきた円すい形のテントです。釣った魚を自分たちで食べることを考えると、網を仕掛けるのも遊びではなく、高原の暮らしの一部なのでしょう。

もちろん、楽な2週間ではありません。2026年のちらしには、晴れでも雨でも、暑くても寒くても、1日に7〜10時間歩けることが求められています。リュックを背負って歩き、テントで眠り、何日もトイレやシャワーがない暮らしに耐えられること。そして、実際の作業を英語で協力して進められること。インターネットはありません。案内が「冒険が少し好きで、自然と新鮮な空気を愛する人のためのキャンプ」と呼びかけているのは、こうした条件をよく分かったうえで来てほしい、という思いの表れでしょう。

15の国から18人。そして来年の募集

キャンプの定員は22人で、男女混合です。家庭での滞在はなく、2週間をキャンプだけで過ごします。参加費はかかりません。ライオンズ・ノルウェーの2024〜2025年度の年次報告には、この年のハルダンゲルヴィッダのキャンプに、15の国から18人の若者が参加したと書かれています。定員より少し少ない人数で、多くの国の若者が顔をそろえたことになります。少人数でテントや作業を分け合うので、国の違う仲間と深く知り合える環境だといえそうです。

ライオンズ・ノルウェーのサイトには、すでに2027年の案内も出ています。2027年は7月12日から24日まで、年齢や定員、無料であること、ネットがないことは同じです。歩く時間は「最大6〜8時間」と書かれていて、年によって少し変わるようです。申し込みの締め切りは2027年3月15日。ノルウェーのキャンプの受け入れ担当がメールで受け付けると書かれていますが、YCEでは、ふつう地元のライオンズクラブや地区を通して申し込みます。

このキャンプから学べること

もしあなたが高校生なら、このキャンプに参加できるのは18歳になってからです。でも、今から準備できることはあります。長い距離を歩く体力、地図を読む力、そして実際の作業を英語で相談しながら進める力です。キャンプの案内が求めているのは、英語がうまく話せることよりも、天気が悪い日にも、仲間と声をかけ合って前へ進めることなのでしょう。スマートフォンがつながらない2週間は、ふだんの生活ではなかなかできない経験になるはずです。

保護者の方にとって気になるのは、ネットがないと連絡がとりにくいことかもしれません。案内には、キャンプの責任者の連絡先が載っていて、参加が決まった人には服装や持ち物の詳しい案内が届くと書かれています。参加費は無料でも、ノルウェーまでの航空運賃や保険は別に必要です。出発前に、連絡の方法と費用の受け持ちを、送り出してくれるクラブと確かめておくと安心です。

ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、テーマをはっきり絞ったキャンプは、それだけで強い呼びかけになるということです。「自然を大切にする」という目的と、「ネットなし、テント泊、長い山歩き」という条件が、きれいにつながっています。だからこそ、合う若者が自分から手を挙げるのでしょう。また、ライオンズが自前の山小屋を持ち、それを若者の国際キャンプに生かしていることや、キャンプの途中で地元のクラブを訪ねる時間をとっていることも、日本のクラブが受け入れを考えるときの参考になりそうです。

補足

  1. 2026年の日程、定員、年齢、無料であること、ネットがないこと、1日に7〜10時間歩くこと、トイレやシャワーのない日があること、活動の一覧は、2026年のキャンプのちらし(PDF)によります。ちらしは、イタリアのライオンズの青少年交流のサイトに載っているものを参照しました。
  2. キャンプの目的と、2027年の日程、歩く時間、申し込みの締め切りは、ライオンズ・ノルウェーのサイトのキャンプ紹介のページによります。ノルウェーで開かれる3つのキャンプは「ユースキャンプ」のページ、山小屋をライオンズが財団を通して持っていることは行事案内のページ、2024〜2025年度の参加者の数は年次報告(PDF、ノルウェー語)によります。
  3. 高原と国立公園の説明は、ノルウェーの国立公園の公式サイトによります。ラヴォの説明は編集部によるものです。
  4. 写真は、夏のハルダンゲルヴィッダの高原です(Hardangervidda-Hochebene、撮影 Mirdsson2、1982年、Wikimedia Commons、CC BY 3.0)。キャンプの写真ではありません。トリミングと明るさの調整をしています。

※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。

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