キャンプ場から、旅するキャンプへ
YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先の家庭やキャンプで過ごします。ミネソタ州のライオンズの地区の一つ、5M9地区のサイトによると、州のライオンズは海外の若者を冬と夏の2回迎えていて、夏に来る若者は滞在のうち1週間、ライオンズのユースキャンプに参加することになっています。ミネソタ州で、その1週間を受け持つのがキャンプ・スパイサーです。
キャンプの歩みは、2007年の地元紙「トライカウンティ・ニュース」が詳しく伝えています。記事によると、キャンプ・スパイサーはその23年前、スパイサーの町にある教会のキャンプ場で始まりました。そして約10年前から、決まった拠点を持たない「旅するキャンプ」に変わります。ミネソタ州にあったもう一つのライオンズのキャンプ「キャンプ・トローブリッジ」も、2007年の少し前にキャンプ・スパイサーと一緒になりました。
旅するキャンプでは、1か所に1週間とどまるのではなく、若者たちがバスで次の場所へ移っていきます。ある夜は各地のライオンズクラブの人たちの家に泊まり、別の夜は大学の寮に泊まって、そこから日帰りで出かけます。2007年の夏は、20人の若者がマンケートの町を出発し、ミネアポリスのオーグスバーグ大学の寮に3日間泊まりました。ディナーシアターで夜を過ごし、ショッピングモールで買い物をし、野球の試合を観て、自分たちでもソフトボールをしました。補助犬を育てる団体や、裁判官を訪ねて、アメリカの裁判のしくみを教わった日もあったそうです。
州のあちこちに散らばるクラブが、それぞれの町で若者を迎える。キャンプ場を持たないからこそ、州じゅうのライオンズが少しずつキャンプを受け持つ形になっていることが伺えます。
各国の料理を持ち寄る夕食会から
2026年のキャンプのちらしには、9日間の主な予定が並んでいます。キャンプは「国際夕食会」で幕を開けます。招かれるのは、州のライオンズのガバナーたち、青少年交流の担当者、そして若者を迎えた家庭の人たちです。料理は、若者たちが一人ひとり、自分の国の料理をつくって持ち寄ります。それまで約3週間お世話になった家庭の人たちに、今度は自分の国の味でお礼をする場にもなっているのでしょう。
そのあとは、各地のライオンズクラブやレオクラブとの交流、仲間づくりの活動と水上スポーツ、ゴーカートとミニゴルフと続きます。ミネアポリス近くの町チャナッセンでは、食事をしながら劇を楽しむディナーシアターへ。全米でも大きなショッピングモール「モール・オブ・アメリカ」や、遊園地「バレーフェア」に出かける日もあります。ディナーシアターやモール・オブ・アメリカは2007年の予定にも入っていて、長く続く定番の行き先のようです。
ライオンズの活動を、自分の目で見て回る
楽しい予定のあいだに、ライオンズが支える団体を訪ねる日が組みこまれているのが、このキャンプの大きな特徴です。2026年のちらしに並ぶのは、亡くなった人から提供された角膜を移植につなぐライオンズのアイバンク、補助犬を育てる団体「キャン・ドゥ・ケイナインズ」、そして世界の子どもたちに届ける食事をボランティアが袋づめする団体「フィード・マイ・スターヴィング・チルドレン」です。最後の一つは見学ではなく、若者たち自身が手を動かす奉仕活動として書かれています。
キャンプのあと、5M5地区の青少年交流の担当者が地区の役員会に出した2026年8月の報告には、こうあります。若者たちは、ミネソタ州の各地でライオンズが何をしているのかを学んだ。地区で知られた活動をいくつも見学し、キャン・ドゥ・ケイナインズや、州のライオンズの目と耳の財団を訪ねた。報告では、エデンプレーリーのライオンズクラブと釣りの団体が、キャンプの一行に昼食をふるまい、ライリー湖での船遊びに招いてくれたことへのお礼も述べられています。
州の各地のクラブが若者を迎える様子は、地元紙にも出てきます。2023年7月の「ブレイナード・ディスパッチ」によると、ブレイナード近くのバクスターのライオンズは、キャンプ場「キャンプ・バナセック」に、18の国から来た24人の若者を迎えました。ベルギー、ブラジル、フィンランド、イスラエル、メキシコ、モンゴル、台湾、チュニジア、トルコ。顔ぶれは、ヨーロッパだけにとどまりません。若者たちはそのあと、近くの町で食べ物を袋づめする奉仕活動に参加したそうです。
キャンプの前の3週間は、家庭で暮らす
2026年の若者たちは、キャンプの前の7月5日から24日まで、州内の家庭で過ごしました。5M9地区のサイトは、この交流は働くためのものでも、観光旅行でもないとはっきり述べています。いちばんの目的は、若者が文字どおり、迎える家庭の一員になること。若者には、自分の国を品よく、心をこめて伝える「善意の大使」であることが求められます。
迎える家庭への呼びかけは、とても具体的です。5M5地区の会報には、若者はみな英語を話すので言葉の心配はないこと、食事は家でふだんのものを出せばよいこと、決まりは一つだけで、若者に自分の部屋とベッドを用意することが書かれています。外で食事をしたいと若者が言うときは、たいてい自分で払うそうです。さらに、ガソリン代と食費のために300米ドルの補助が出ます。
2024年7月の「ブレイナード・ディスパッチ」は、バクスターのライオンズの会員で、これまでにも若者を迎えてきた人の家を訪ねています。この夏に迎えたのは、フランスから来た19歳とデンマークから来た18歳の2人。湖で水上スキーをし、7月4日の独立記念日のパレードを見に行きました。デンマークの若者はこう話しています。「観光客なら観光地に行くだけ。でもここでは、本当の文化を体験できる」。2人は、アメリカの大きさにも驚いたそうです。
2007年の記事では、4人の若者を一晩だけ家に泊めた夫婦が、家の牧場を案内し、それぞれの国の本を見せ合って、夜遅くまで話したと語っています。翌朝7時半には、もうバスに戻る時間。「すばらしかった。でも、時間が足りなかった」。当時のキャンプの世話役は、夏の短い受け入れは、半年や9か月の長い受け入れを決める前に、交流を試してみるよい方法だと話しています。
迎える家庭が見つかるまで
先に紹介した2026年8月の報告は、うまくいったことだけでなく、苦労も率直に書いています。5M5地区では4人の若者を迎え、家庭からも若者からもおおむね良い声が届いた。けれども、迎える家庭がなかなか見つからず、6月の半ばまでかかった。来年は少なくとも5〜6の家庭に迎えてほしいので、できるだけ早く家庭探しを始め、2027年4月の終わりまでにすべての若者の行き先を決めたい。申し込みが届き始めるのは、年が明けてからだそうです。
報告は、アメリカでライオンズの国際ユースキャンプを開いているところは12にも満たない、とも書いています。だからこそ、この取り組みを続けていきたい。そして、若者や迎えた家庭をクラブの例会に招いて、この交流がどれほど実りあるものかを話してもらえたら、と各クラブに呼びかけています。若者が全員、それぞれの国のライオンズクラブの推薦を受けて来ていることにもふれ、迎えた家庭と支えたクラブへの感謝で結んでいます。
このキャンプから学べること
もしあなたが高校生なら、このキャンプは16歳から参加できる行き先の一つです。キャンプの最初には国際夕食会があるので、日本の家庭料理を一品、迎えてくれる家庭の台所でもつくれるように練習しておくとよいでしょう。材料が手に入りやすく、たくさんの人に取り分けやすい料理だと安心です。約3週間の家庭での暮らしも、このキャンプの大切な半分です。ブレイナードの記事の若者が話していたように、観光では見えない毎日の暮らしに飛びこむつもりで出かけると、得られるものが大きくなるはずです。
保護者の方にとって気になるのは、費用と暮らしの環境でしょう。ちらしに書かれた参加費は400米ドルで、ほかに航空運賃や保険、身の回りのお金がかかります。5M9地区のサイトには、若者は自分の身の回りの費用を自分で払うとあります。一方で、迎える家庭には自分の部屋とベッドを用意することが求められていて、家庭への補助もあります。出発前に、送り出してくれるクラブと費用の受け持ちを確かめておくと安心です。
ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、キャンプそのものを、地区の奉仕活動を巡る旅にしていることです。アイバンクや補助犬の団体、食事の袋づめと、若者たちは見学して終わりではなく、自分でも手を動かします。キャンプ場がなくても、各地のクラブが一晩の宿や一回の昼食を受け持てば、州全体で大きなキャンプが開けるということも、この例から分かります。迎える家庭への補助を決めておくこと、家庭探しを春のうちに終える目標を立てること、迎えた家庭に例会で話してもらうこと。報告に書かれたこうした工夫は、日本のクラブが受け入れを考えるときにも、そのまま参考になりそうです。
補足
- 2026年の日程、年齢、参加費、言葉、キャンプの主な予定は、2026年のキャンプのちらし(PDF)によります。ちらしは、イタリアのライオンズの青少年交流のサイトに載っているものを参照しました。
- 2026年の参加者の数、訪ねた団体、迎える家庭探しの様子は、5M5地区の青少年交流の担当者が2026年8月7日付で出した報告(PDF)によります。迎える家庭への呼びかけと補助の額は、5M5地区の会報2026年2月号(PDF)によります。
- 冬と夏の受け入れのしくみ、交流の目的、クラブの役割は、5M9地区のサイトによります。キャンプの始まりと旅するキャンプへの変化、2007年の予定と家庭の声は、2007年の「トライカウンティ・ニュース」の記事によります。記事中の「23年前」「約10年前」は、記事が書かれた2007年から数えたものです。
- 写真は、キャンプの名前のもとになったスパイサーの町から見たグリーン湖です(Green Lake - Spicer, Minnesota、撮影 Tony Webster、2017年、Wikimedia Commons、CC BY-SA 2.0)。キャンプの写真ではありません。トリミングと明るさの調整をしています。
※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。
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