国際会長の名前を持つキャンプ

YCE(ユースキャンプ及び交換)は、ライオンズクラブ国際協会が続けている青少年交流です。若者は地元のライオンズクラブの推薦を受けて海外へ出かけ、行き先の家庭やキャンプで過ごします。テキサス州でその受け入れを担っているのが、このキャンプです。

キャンプの名前になっているジュリアン・C・ハイヤーは、1931年から1932年までライオンズクラブ国際協会の会長を務めた人です。キャンプのサイトによると、ダラスとフォートワースで最初にできたクラブの会員として、55年以上ライオンズの活動を続けました。サイトは、ハイヤーをライオンズの青少年交流を始めた人として紹介しています。第二次世界大戦のあとに開かれたニュルンベルク裁判に関わった経験が、国をこえて若者どうしが知り合う交流を思い立つきっかけになった、とも書かれています。

キャンプは1973年に準備が始まり、翌1974年の夏に最初の若者を迎えました。ハイヤーが亡くなったのも1974年です。それから50年以上、毎年平均25〜40人の若者がテキサスで夏を過ごしてきました。海外の若者だけでなく、自分の州のことをもっと知りたいテキサスの地元の若者も参加できるそうです。キャンプのサイトの紹介文には、ライオンズクラブ国際協会のサイトに載る123のキャンプのうちアメリカのものは14あり、テキサス州ではここだけだとあります。2022年に地元のテレビ局KXIIが取材したときも、「テキサス州でただ一つのキャンプ」と紹介されていました。

ダラスの家庭から、湖のキャンプへ

2026年のちらしによると、若者たちは期間の大半をダラスの家庭で過ごし、そのあいだに3つの旅に出ます。1つ目は、オクラホマ州との境にあるテキサマ湖で過ごす1週間のキャンプ。残りの2つは州内の別の町への5日間ずつの旅で、行った先でもそれぞれ地元の家庭に泊まります。キャンプのサイトには、若者は全部で3つの家庭に迎えられるとあります。1つの家庭に長く暮らしつつ、州のちがう土地の暮らしものぞける組み立てだということが伺えます。

キャンプのサイトの「参加を考えている人へ」のページには、ある年の週ごとの予定が例として載っています。1週目はダラスとフォートワース。ジョージ・W・ブッシュ大統領の図書館と博物館、プロのアメリカンフットボールのチームが使うAT&Tスタジアムを見学し、メスキートの町でロデオを観て、大リーグのテキサス・レンジャーズの試合にも出かけます。7月4日の独立記念日も、この週に迎えます。

2週目がテキサマ湖のキャンプです。泳いだりボートに乗ったりするほか、野生生物の保護区を訪ね、郡の裁判所では裁判官の法廷を見学します。地元のライオンズクラブを訪ねる日や、公園の音楽会、ヨットクラブでの一日もあります。ハイヤー自身が裁判官だったことを思うと、法廷の見学が予定に入っているのは、キャンプの名前の由来とも重なって見えます。

2022年にKXIIがこの湖の週を取材したとき、当時キャンプの副会長だったカレン・マレーさんはこう話しています。「子どもたちを集めて、交流して、知り合う。平和と理解を広めるためです。見た目も、話す言葉もちがうけれど、共通することがたくさんあるのだから」。この日、若者たちは、ライオンズが集めた使用済みの眼鏡を整えて、眼科医とともに海外の支援に届ける活動についても話を聞いていました。ベルギーから来た若者は「アメリカの家庭で暮らすことも、湖の周りのいろいろな場所も、ライオンズが用意してくれた活動も、全部が大好き」と答えています。

州都と古い町、そして2026年は海辺の町へ

3週目は、テキサス州の真ん中にあるウィンバリーの町が拠点です。予定の例を見ると、州都オースティンでテキサス州の歴史博物館を訪ね、湧き水でできた泉「ジェイコブズ・ウェル」や川の泳ぎ場「ブルーホール」で泳ぎます。サンアントニオでは、1836年の戦いで知られるアラモの砦を見て、町を流れる川をボートで下ります。サンマルコスのライオンズクラブとは、浮き輪で川を下る遊びを一緒に楽しみ、夜はカントリーダンスの夕食会です。ドイツのライオンズによる2026年の紹介には、オースティンの州議会議事堂を訪ねることも書かれています。

4週目の行き先は、キャンプのサイトでは西部のラボックの町か、メキシコ湾岸のガルベストン周辺とされています。2026年のちらしの予定はラボックで、近くの大きな峡谷「パロデュロ・キャニオン」の野外劇場で、テキサスの開拓の歴史を描いたミュージカル「TEXAS」を観ることになっていました。カウボーイの暮らしを伝える博物館や、科学館を訪ねる日もあります。

けれども実際の2026年の旅は、ガルベストン湾に近い海辺の町、クリスタルビーチになりました。地元のニュースサイトによると、若者たちは町の4つの家庭に分かれて5日間を過ごしました。NASAの宇宙センターを訪ねたのは、キャンプの歴史で初めてのことだそうです。ほかにも、ガルベストンの観光施設「ムーディー・ガーデンズ」や、ケマーの町の海辺へ出かけ、ボートに乗ってイルカを探しながら、戦艦テキサスや歴史あるガルベストン湾を巡りました。夜は毎晩、ゴルフカートに乗って浜辺を走ったといいます。若者を迎えた地元の人は、クリスタルビーチがこれからもキャンプの決まった行き先になってほしい、と記事に寄せています。決まった型を守るだけでなく、迎えてくれる町があれば行き先を変えていける柔らかさも、長く続いている理由の一つなのでしょう。

同じ記事には、2026年の参加者の内訳も載っています。ブラジルから3人、フィンランド、ドイツ、イタリア、モンゴルから2人ずつ、デンマーク、フランス、ハンガリー、リトアニア、スペイン、スロベニアから1人ずつの、11の国から17人です。ヨーロッパの国が多いなかに、南米のブラジルやアジアのモンゴルの若者も加わっていました。

最後の夜は、自分の国の料理で

5週目は、ふたたびダラスとフォートワースに戻ります。予定の例には、遊園地シックス・フラッグスや、フォートワースの大きなカントリー音楽の店「ビリー・ボブズ」でのラインダンスが並びます。そして最後に、お別れの夕食会と踊りの会が開かれます。夕食会の料理は、若者たちが一人ひとり、自分の国の料理をつくって持ち寄ります。地区のバッジが配られ、その年のいちばんのキャンパーを選ぶ表彰もあるそうです。

ライオンズクラブ国際協会のブログには、2016年の夏にこのキャンプに参加したブラジルの若者の体験記が載っています。着いた日に迎えの家庭が連れていってくれたのは、大きなハンバーガーの店。家庭の犬との散歩が日課になり、キャンプの週には迎えの家庭を招いて出し物の会を開き、それぞれの国を紹介し合いました。独立記念日にはたき火を囲み、パロデュロ・キャニオンやアラモ、ジェイコブズ・ウェルにも出かけています。迎えの家庭の妹に教わったテキサスの言い回しをめぐるやりとりが、ネットで話題になったこともあったそうです。お別れの夕食会では、各国の料理を分け合いながら、ほとんど全員が泣いていたといいます。5週間で体重が10キロ増えた、という話も添えられていて、テキサスの家庭のもてなしぶりが伝わってきます。

キャンプを支える地区の人たち

このキャンプは、ダラスとフォートワース周辺の2-X1地区と2-E2地区が中心となり、ウィンバリーやラボックのある2-S3地区と2-T2地区のクラブとともに運営しています。キャンプのサイトによると、若者が払う参加費は325米ドルで、そのほかの行事の費用は、キャンプの基金や地元のクラブの協賛でまかなわれています。

2-E2地区のサイトには、地区としての支え方が具体的に書かれています。迎える家庭には、部屋と食事を用意すること、家族の行事に若者を加えること、地元の名所に連れていくこと、送り迎えをすること、そして安心して過ごせる家であることが求められます。お金で支える方法も選べて、1,000米ドルで若者1人分のキャンプを支える支援や、125米ドルの終身会員があります。貸し切りバス、湖の週、独立記念日、歓迎会やお別れの夕食会、おそろいのTシャツなど、行事ごとに協賛を受け付けているのも特徴です。キャンプの運営委員会は、多くの月の第3土曜日に集まっています。

同じページには、参加した若者たちの声も載っています。イタリアから来た若者は、これからは故郷を聞かれたら、イタリアだけでなくメキシコとテキサスもと答えたい、と書いています。テキサスで出会った仲間や家庭が、それだけ深く心に残ったということなのでしょう。

このキャンプから学べること

もしあなたが高校生なら、このキャンプは17歳から参加できる、約5週間という長めの行き先です。テキサスの夏は35〜40度になる一方、建物の中は冷房で22度ほどに冷えているので、日焼け止めと羽織るものの両方を用意するよう、キャンプのサイトは呼びかけています。最後の夜の夕食会に向けて、日本の家庭料理を一品、迎えてくれる家庭の台所でもつくれるように練習しておくとよいでしょう。3つの家庭それぞれに渡せる小さなお土産も、あると喜ばれそうです。

保護者の方にとって気になるのは、長い滞在のあいだの暮らしでしょう。キャンプのサイトでは、食べ物の制限や宗教上の配慮には応じること、アメリカでは21歳まで飲酒ができないことを、あらかじめ伝えています。ちらしの参加費は325米ドルで、ほかに航空運賃や保険、身の回りのお金がかかります。申し込みは、自分の国のライオンズの青少年交流の担当者を通して行います。出発前に、送り出してくれるクラブと費用の受け持ちや連絡の方法を確かめておくと安心です。

ライオンズクラブのメンバーとしてこのキャンプから学べるのは、一つの地区だけで抱えこまず、州内の複数の地区で役割を分けていることです。ダラスの家庭が若者の拠点になり、湖の週や町への旅は、それぞれの土地のクラブと家庭が受け持ちます。バスや夕食会、Tシャツといった行事ごとに協賛を募れば、小さなクラブでも自分に合った形で関われます。2026年に行き先を海辺の町に変えたように、迎えてくれる町があれば予定を組みかえていけるのも、50年以上続くキャンプならではの強みでしょう。日本のクラブが受け入れを考えるときにも、近くの地区と行き先を分け合うという発想は、そのまま参考になりそうです。

補足

  1. 2026年の日程、年齢、参加費、言葉、旅の組み立ては、2026年のキャンプのちらし(PDF)によります。ちらしは、イタリアのライオンズの青少年交流のサイトに載っているものを参照しました。申し込みの締め切りは、ちらしでは2026年4月5日、ドイツのライオンズの案内では3月31日となっていて、国によって異なるようです。2-E2地区のサイトでは、対象を17〜20歳としています。
  2. キャンプの始まり、ハイヤーの紹介、運営する地区、費用のまかない方は、キャンプのサイトのトップページによります。週ごとの予定の例、迎える家庭の数、夏の気温、飲酒や食べ物についての案内は、キャンプのサイトの「参加を考えている人へ」のページによります。このページの予定は過去の年のもので、行き先は年によって変わります。
  3. 2026年の参加者の内訳、クリスタルビーチでの5日間の様子は、地元のニュースサイト「Crystal Beach」の記事によります。湖の週の様子とカレン・マレーさんの言葉は、2022年のKXIIの報道によります。2016年の体験記は、ライオンズクラブ国際協会のブログ(2019年)によります。迎える家庭の役割と協賛のしくみ、参加者の声は、2-E2地区のサイトによります。
  4. 写真は、キャンプがこれまでの夏に訪れてきたパロデュロ・キャニオンの風景です(Palo Duro Canyon from CCC Overlook 2024、撮影 Larry D. Moore、2024年、Wikimedia Commons、CC BY 4.0)。キャンプの写真ではありません。トリミングと明るさの調整をしています。

※日程や参加国、募集の有無は年によって変わります。最新の情報は、地元のライオンズクラブや地区に確認してください。

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